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卒業生インタビュー  塚本洋さん

塚本洋さん

現在は中日ドラゴンズでコンディショニングコーチをされている塚本さん。チームの勝利に向けて選手の育成と組織作りに奮闘する毎日です。BBT大学で「千本ノック」のような3年間を経た今、学んだ全てがプロ野球球団という職場で生かされていると語られています。経営の諸要素とコンディショニングコーチという仕事がどう結びつき形になっていったのか。その全容を伺いました。

自分の限界を知った高校時代、そして導かれた指導者としての野球との関わり

現在は中日ドラゴンズのコンディショニングコーチとして球団の二軍選手の指導をしています。業務内容は、二軍でのトレーニングを通じた主力選手の調整、若手選手の体力強化、そして故障選手のリハビリです。この仕事の最終目標は、手のかからない選手が自動的に育っていく環境を作り、僕の仕事がなくなることです。といっても現実的にはなかなか難しいので、いまだに仕事をしている訳ですが。
中日ドラゴンズに入団して、今年で14年目です。大学の一年生の時から学生トレーニングコーチをしていたので、20年に渡ってコーチをしていることになります。
小中高とずっと野球をしていました。プロ野球選手になるのが夢でした。高校に進むまでは順風満帆にいっていたのですが、高校時代に自分の技術的な伸びと周りのそれとを比較して、自分の技術ではプロになるには厳しいことが分かりました。その時に、なぜなれないのか、練習方法をどこでどう間違えたのだろうかと疑問を持つようになり、原因を探るために体育大学へ進みました。指導者になりたいと思い始めたのはこの頃からです。
大学一年の時に当時の監督から専門でトレーニングコーチをやってみないかと誘われ、それ以来トレーニングコーチをやっています。大学卒業後は社会人野球の松下電器野球部(現パナソニック野球部)で5年間従事しました。その時の活動が評価され、中日ドラゴンズからオファーを受けて入団し、今に至ります。

塚本洋さん

チームを強くするために経営を学ぶ「最後は体力です」の一言で入学を決意

BBT大学に入学したのは2012年の春です。プロ野球の世界でトレーニングコーチとして仕事をするようになってちょうど10年経ち、この先の10年に向けて現状から一つレベルアップし自己を高めていくには何をする必要があるのかを考えていた時期でした。
トレーニングの専門性をより高めるために大学院へ進むという選択肢もあり、実際に同業者の中にはその選択をする人も多くいました。しかし僕には「チームを強くする」という観点が常に心の奥にあったので、専門性を高めるという選択肢に疑問を感じていました。 また前々から、組織や育成、チームビルディングといった分野に関心があり、パナソニック出身でもあるので、松下幸之助さんの書籍や関連するビジネス書をよく読んでいました。そして読んでいく中でチーム作りと経営を学ぶ事とが結び付くようになっていきました。当時の中日ドラゴンズは落合政権で常勝軍団でしたが、この状態を長く続かせるためには会社を含む組織がしっかりしていなければ、という危機感があり、チームを強くするには「経営」を学び組織を強くする、つまりチームビルディングだと思い至るようになったのです。そこで検索してヒットしたのがBBT大学でした。
代理の利かない職に就いている僕にとって、100%オンラインでスクーリング不要というのがまずカギになりました。ただ、大学の4年間を全てオンラインで学ぶというのは時間的にも労力的にも厳しいのではないかという不安はすごくありました。ですがやってみたいという欲求の方が強かったので説明会へ行き面談をし、そこで「最後は体力です」と言われた時、「じゃあできる、やろう」と思いました。なりたいもの、手に入れたいものがあるなら、時間は作るんだということで決断できましたね。

学んだことが全て繋がり、即座に仕事で活用できる毎日

在学中は、授業で聞いた内容をそのまま現場で実行するのを繰り返す日々でした。学んだことが仕事で即座に活用できたんです。問題解決、コーチング、マネジメント、マーケティング、組織、戦略、全てが繋がっていきました。
例えば問題解決ですと、リハビリ選手を見る時に、まずは問題点を全て洗い出すという作業があります。今までだと肩を痛めた選手なら肩を治すという点にクローズアップされてしまっていたのですが、肩を痛めた原因は他にないのかという発想、つまり胸、首、腰、骨盤、股関節その他の動きの悪さが肩に影響しているのではないかといった見方ができるようになったんです。以前はそういう視点の置き方ができるのは特殊技能の持ち主だけだと思っていたのですが、問題解決は発想の仕方が体系化されているので、洗い出し、分類し、対策を立て、さらに対案を提示するといった一連の考え方を、スポーツ選手のトレーニングやリハビリに応用できたのです。見事にマッチしましたね。
またコーチングですと、「選手を伸ばす」という小さなモノの見方をしていたのが、メディア業界やマスコミ、または用具係やファンの方といった周りの人や環境という範囲まで考えるようになりました。そして、そういう所を巻き込むことで、選手が社会に目を向け他者の幸せを考えるようになると選手自身も伸びるという発想を伝えることで、選手の意識改革を促すこともできました。「ファンサービスファースト」が結果を出しやすくするという考えです。
さらにマーケティングでは、顧客とは誰かという視点を得ました。僕にとっての顧客は目の前にいる選手でもある。選手に僕の情報を買ってもらう感覚です。そのためにすべきことを僕は準備しなければならない。次に僕と選手をペアにした場合、顧客は首脳陣になり、選手という商品を首脳陣に買ってもらうイメージです。完璧に仕上がりましたよってアピールします。さらに今度は二軍の首脳陣と選手と僕を括った場合、顧客は一軍の首脳陣であり、選手という商品を一軍に買ってもらうイメージになります。ですから需要と供給といった色んなキーワードが出てきます。そしてもっと大きく括ると、今度はファンの皆さんや社会にこのプロ野球選手をどう見てもらい、どう売り込むかという発想になっていきます。このようにマーケティングを学ぶ事によって、様々な視点に応じた取り組みができることを知りました。この発想は、選手という大事な高額商品をどうプロデュースしていくかという意味においても大きな収穫になりました。

塚本洋さん

プロジェクトマネジメントで作ったガントチャートで選手とゴールイメージを共有

プロジェクトマネジメントという科目を履修したのですが、実際に計画を立てるという課題があり、僕は「一人の選手を作る」というプロジェクトを企画しました。要するに選手のリハビリです。そのリハビリに必要な要素を洗い出し、順番に並べ、計画書を立て、それに関わる人を配置するといった書類を作成し、実行するというものなのですが、一人の選手のリハビリプロジェクトとして成立しました。
工程表(ガントチャート)にリハビリ計画を立てていくんです。例えば「投げる」という項目をブレークダウンしていくと、シャドウピッチング、ネットスロー、壁に向かって投げる、対人で投げる、距離を分割していく、フラットな地面で仮想ピッチングをする、ブルペンで投げる、フリーバッティングで投げる、実戦形式で投げる、試合で投げる等「投げる」だけでも相当あるんですよね。そういった工程を一つ一つこなしてステップアップしていくと、表で見た時にだんだん色が変わって下がっていき、下に行けばレベルの高い状態になっていることが分かるという仕組みです。選手はこれを見ることで選手自身のリハビリ段階を確認し、目標設定の材料にすることができました。
病院でもプロトコールと呼ばれるリハビリ計画書は当然あります。しかしワーク・ブレークダウン・ストラクチャというレベルにまで細分化し「投げる」「打つ」を設計していくというマニアックな計画書は、これまで見たことがありません。
このガントチャートの素晴らしい所は、自分と選手と同僚とが紙一枚で状況を共有できることです。選手は細かい文字を見るのが実は得意ではないのですが、ガントチャートは計画通りに色が変わっていくことで達成の度合いが分かるようになっているので、「この時までには復活したいね」といったことを共通のシートで確認し合うことができます。手術明けなどで長期離脱をしている選手は気持ちを保つのが大変です。なので日々良くなった悪くなったと一喜一憂するのではなく、ゴールを設定しビジュアルとして「見える化」する治療を行うことで、今の時期はこの段階だから、ちゃんと前に向かって進んでいる、ここに向かって頑張ろうと励まし、ゴールを見据えて接することができるようになりました。この課題で用いた工程表は今でも活用しています。

卒論を通して痛感した選手へのプレッシャーとコミュニケーションの大切さ

経営学で学んだことが仕事にどう生きるかを考えた時に卒論のテーマとして頭に浮かんだのが人材育成でした。そしてこの人材育成をする上で必要かつ球団に足りないことを探っていった時、高卒選手がなかなか伸びていないという現状にぶち当たりました。名球会入りの大御所選手がいることも一因としてあったのですが、それを押し退けるだけの若者が出にくい土壌があることが分かりました。そこで、伝統ある球団でベテラン選手が多く、監督やコーチ陣にも実績ある方が多くいるというストレスフルな環境の中で、心理的なプレッシャーによって力を出し切れずパフォーマンスを下げてしまう選手がいるのではないかという仮説を立て、それに取り組むという内容を卒論のテーマにしました。
こうして卒論をきっかけにストレスの原因を様々な角度から調べていったところ、高卒選手は特に対人関係において強いストレスを感じていることを理解しました。また中日ドラゴンズが他球団よりプレッシャーやストレスを感じる度合いの強い、伝統ある強い球団なのだということも改めて感じました。そして卒論執筆にあたり一人の選手に注目して追いかけていく中で、知らず知らずのうちに僕自身も彼らにプレッシャーやストレスを与えていたことに気が付きました。成長を加速させたい、失敗をさせたくないという思いが強すぎるあまり、彼らに色々と厳しい接し方をしていたのです。
しかしながらストレスを今後回避する訳にもいかないので、コミュニケーションの取り方やストレスマネージメントについて、心理学の先生にも相談に乗っていただきました。そして、見守っていくことや話をすること、コミュニケーションを取り続けることの重要性を改めて痛感した次第です。
卒論を通じて、トレーニングコーチとしての自分を大きく顧みることも出来ました。若くて伸び悩んでいる選手には、特にこういう思いで接することが彼らの成長に繋がるという新しい確信を持って、日々コミュニケーションを取っています。

塚本洋さん

BBT大学は見える景色が変わる場所

まずマネージャーやコーチにとって最適な大学だと思います。単純に指導力が上がると思うんですよ。問題解決力、コミュニケーション能力、情報収集力、編集力、伝達力といった経営学の要素は、指導者に全部必要なものです。球団経営や選手指導に携わる人にはBBTで経営を学ぶことで得られるものが沢山あると思いますので、是非お勧めしたい。特に話の長いコーチね。もうちょっとまとめたら伝わるのにってシーンがしょっちゅうありますからね。
次に選手が学んだ場合ですが、自己プロデュース能力が身に付くのではないかと思います。市場やライバルを分析する力、首脳陣のニーズとポジションの過不足を把握する力、そして自分を戦略的に売り出していく力といったことですね。こういった視点を身に付けることで、プロ野球選手としての価値を上げていけるのではないかと思います。やはり選手はいかに試合に出られるかが一番の価値ですので。
そして僕にとってですが、BBT大学を通して目線が上がり、見えている景色が変わっていきました。BBT大学で得たこの視点を武器とし、結果を出せるトレーニングコーチを目指していきたいと思います。優秀なコーチはいっぱいいますが、専門性が高くても伝えられなければ意味がないので。僕はBBTで学んだことを生かして、今のレベルでも確実に選手に伝えられるコーチでありたいですね。

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