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2015/11/12

BBT大学×JICA「なんとかしなきゃ!プロジェクト」共催 「国際協力ソーシャルビジネス講座」特別ワークショップ 谷中修吾先生

〈BBT大学イベントレポート〉

BBT大学×JICA「なんとかしなきゃ!プロジェクト」共催

「国際協力ソーシャルビジネス講座」特別ワークショップ 谷中修吾講師

2015年9月6日、ビジネス・ブレークスルー大学麹町校舎で、特別ワークショップ「国際協力ソーシャルビジネス講座」が開催された。このワークショップはBBT大学と国際協力機構(JICA)の共催で「開発途上国の課題を解決するビジネスデザイン」をテーマに、国内外でソーシャルビジネスの立ち上げに多数の実績を持つ、本学講師の谷中修吾氏主導のもとアレンジされたものである。

このたびBBT大学とコラボレーションすることになった「なんとかしなきゃ!プロジェクト」とは、ODAの実施機関であるJICAが事務局を担当する国内最大級の国際協力プラットフォームであり、JANIC(国際協力NGOセンター)、UNDP(国連開発計画)などをはじめとする国際機関、3万人以上の一般フォロワー、100名を超える著名人メンバーといった幅広いステークホルダーによって構成される。開発途上国が抱える多くの課題を沢山の人に知ってもらい、その解決をめざす国際協力の必要性を社会全体で共有していくことを理念に掲げ、2010年より活動している。

今回「国際協力ソーシャルビジネス講座」で取り上げる開発途上国は、東南アジアの中でも今後の成長が大きく期待されているラオスである。今年で日本との国交樹立60周年を迎え、さらに青年海外協力隊の初派遣の地でもあり、日本とはゆかりの深い国である。

このワークショップでは、ラオスが直面する社会的課題を会場に集う参加者個々人の視点で見出していき、谷中氏が体系化した「新規ビジネスをデザインする技法」(技法についての詳細はこちら)を応用することでどのようなソリューションを提供できるかを組分けされたチームごとに検討していき、企画書としてまとめ、プレゼンテーションするというところまで取り組んだ。

まずブリーフィングとして、現地ラオスのJICA事務所より中継でラオスの現状についてご説明いただいた。「宝箱の上に座っている国(豊富な資源を活用できていない)」と比喩されるラオスについての、以下が概要である。

概況

・疎らな人口 ・内陸国 ・多民族国家 ・多様性に富む地勢 ・不発弾問題

政治

・内政:ラオス人民革命党による安定した政治

・外交:各国とのバランスに配慮した全方位外交。伝統的な親日国

経済

・経済成長率:資源開発、電力輸出、建設等国内需要に牽引されて7-8%台の高い水準で推移

・貿易収支:慢性的に赤字で推移

ラオスへの投資動向

・直接投資:直接投資はラオスへの経済成長に大きく寄与

      セクター別では電源開発、鉱山開発、農業が上位を占める

      国別では中国、根と南無、タイが上位を占め、日本のシェアは2.5%

ラオス進出日系企業の動向

・進出日系企業:2012年までは微増。2012年以降2年半で倍増し125社

・タイ+1:タイ洪水、最低賃金引上げを受け、生産工程の一部をラオスに移す動き。

インフラ

・道路・橋:東西・南北経済回廊を中心に道路・橋の整備が進みアセアン連結性を強化

・電力:東南アジアのバッテリーを目指し、水力開発に注力

社会構造

・人口構成:30歳未満の人口が全体の66.7%という若い社会

・雇用:民間セクターが未発達なため、自営業や家族労働者が全体の86%を占める

教育

・基礎教育の普及・改善が最優先課題。初等教育の純就学率は順調に改善傾向

・残存率、識字率をはじめとするその他の指標については、更なる取組み強化が必要

・高等教育は、アセアン経済統合の進展により産業界のニーズに応える産業人材の育成が急務

保健

・栄養(低身長・低体重)、予防接種の健康指標はMDG目標達成が危ぶまれている。

ラオスにおけるJICA事業概要

・支援の意義:ラオスの発展はメコン地域、ひいてはアセアン全体の繁栄に不可欠

・基本方針:MDGs達成及び2020年までの低開発途上国(LDC)からの脱却への支援

これらの概要説明と質疑応答のあと、谷中氏は「一見関連がないような事柄に思えても、これとこれが結びつくかもしれないという視点を持って今の情報を活用してほしい」と提言し、そしてこのワークショップで着目する社会的課題を二つ提示。

この二つの課題に相応する事例として谷中氏は、

・ウドムサイ県の文化情報観光局で観光開発マーケティングの支援をする青年海外協力隊(観光開発の事例)

・首都ビエンチャンで女性や青少年の経済的自立の支援のための職業訓練施設を運営するNGO「IV-Japan」(人材育成の事例)

の活動を紹介した。いずれもこの「なんとかしなきゃ!プロジェクト」の一環として、7月に谷中氏がラオスに直接赴き密着取材してきたものである。

そして上記二例を提示後、会場の参加者に二つの課題のいずれかを選択してもらい、同じ課題を選んだ者同士で4~5人程度のチームを作り、課題解決に至るビジネスプランの作成に取り組んでもらった。なお、参加者の設定は以下である。

ここで谷中氏は検討するうえでの統一見解として「大事なのはラオスの専門家になることではなく、あくまで今日出てきた色々な情報に基づいて思考を組み立てることであり、課題を解決するビジネス案としての"仮説"を持つことである」と指摘。実現性の検証は次のフェーズなので、既成概念に捉われないユニークな切り口を見つけてほしいと参加者に促した。また、提案する事業形態は自由なので柔軟な発想をもって取り組んでほしいと述べた。

そして課題解決へのアプローチとして、谷中氏が本学でも教えている「クリエイティブ技法」と「ロジカル技法」を組み合わせた手法を説明(詳細はこちら)。まずは自由に想像的に考え、そして整理しながら構造的に結び付けていくという方法論である。

この手法をもとにチームで検討して一枚の企画書を作り上げ、解決案をプレゼンしていくのだが、ここで谷中氏は企画書に入れるべき要素を説明。

・事業タイトル

・ターゲット顧客(及びそのニーズ)

・提供価値

・事業内容詳細

これらを踏まえ、各々のチームは時間をかけて企画を練り上げ、ラオスに駐在経験のあるJICAのスタッフの方々によるエキスパートコメントを参考にしながら、プレゼンテーションまで力を出し合った。

以下は参加チームの企画書タイトルである。

課題『産業人材育成が十分になされていない』解決チーム

  ・LAOS舞子式ホスピタリティ教育事業

・ラオス×日本 人材サービスWin Win戦略

・ラオス観光大学

課題『産業基盤となるインバウンド観光開発が十分になされていない』解決チーム

・あの時あの頃あの時代 昭和の幸せ★見つけにラオスへ行こう!

・ぷらっと寄り道ラオス

・Youtuberブートキャンプ

・あなたも新種発見!珍虫採集ツアー

・FUN LAOS

代表して、アワードを進呈された二つの企画を紹介する。

<なんプロ賞>FUN LAOS

仮説:キラーコンテンツで集客したら関連産業に発展させられる!右脳のみを使う!

ターゲット顧客(及びそのニーズ)

 欧米・アジアの若者

音楽フェス:音楽好き 体験好き 辺境・秘境好き バックパッカー系 

マラソン:走ることLOVE 健康志向 非日常体験したい人

提供価値

 山岳 豊かな自然 豊かな文化(少数民族) 大自然で大音量 異空間の音楽体験

事業内容詳細

 [音楽フェス]

 場所:バンビエン

 特徴:EDM(集客力の高い音楽)

 ドローンを飛ばす 川下りを楽しめる ストリートカルチャーイベント

 YouTuberチームと共に取り組む

 [マラソン]

 場所:ビエンチェン→ブーピア

 特徴:都市マラソンではなく都市から山の中を駆け巡る新しいマラソン

給水地には現地民族の方にサポートいただく 観光地 撮影ポイントに

    ゴールはメコン川の夕日を眺めながら

 [両者共通]

 宿泊:民族文化交流コテージ ウルルン滞在

交通:ジムニーをレンタル 現地の色々な民族の方々と交流が図れる

展開:様々な旅行コンテンツへ派生させていくことが可能

この企画に対して、エキスパートとして参加者にアドバイスをしたJICAの松崎氏は「音楽フェス、ありだと思った。人が集まる可能性が非常に高く、ラオスという国を認知してもらう良い企画だと感じた。一方で、バンビエンに5万人もの人が集まった時に、都市機能といった面において、同じタイミングで街に入れるのかいうことを左脳で考えていく必要があると思った、しかしながら発想が面白い」と評価された。

同じく戸谷氏は「音楽フェスを呼び水としてホームステイや観光に繋げていくという、新しいアイデアだと思った。これまでラオスを旅行する層ではない、未開拓の層もターゲットとしており、マーケティングとして斬新なアイデアである。ラオスは一党支配の国なので、大規模な集会や人が集まるイベントに関して懐疑的な側面が強いが、このような企画をすると今までラオスに来なかった人たちが沢山きてラオスをアピールしてくれると時間をかけて粘り強く交渉する必要があるかもと思った」と実現に向けた前向きな感想を言われた。

谷中氏は「フェスとマラソン、同じ発想でも集客の切り口をそれぞれ用意していて、自由な発想、右脳と言いながらもきちんと左脳に落とし込んで検討をしている。ソリューションとしての着眼点が素晴らしい」と述べられた。

<BBT賞>LAOS舞子式ホスピタリティ教育事業」

仮説1:ラオスの女性は商魂がある!

仮説2:ビジネス展開をする技術を学ぶ機会がない!

仮説3:特産物があってもPRする力が足りない!

ターゲット顧客

義務教育を終えたラオスの女子たち

ニーズ

 ラオスの女性たちによる独自発展のサポート

提供価値

 ラオスの女子向けにラオスの各民族の伝統芸能を通したホスピタリティを教育

事業内容詳細

 場所:首都ビエンチャン

 実現施策:学ぶ内容=芸能+マーケティング+デザイン

      ◎実践の機会

      ◎コンサル・カウンセリング

      ◎姉妹制度(舞子制度のようなもの) がある

価格:10,000円/年

プロモーション:各地の小学校卒業生のネットワーク(奨学金)

資本金:賛同する企業より 最低三年間

この企画に対し松崎氏は「女性の社会進出の問題は日本でも世界でも課題として大きいテーマであり、目の付け所が良いと思う。日本の伝統芸能の制度をうまく取り入れているし、価格設定も現実的である。ラオスは女性に関して、起業するとか政治家になるといった活躍のフィールドがまだないので、女性が輝ける社会の実現という意味でもこれからの時代の習慣にうまく乗るのではないかと思う」と評価された。

同じく荒井氏は「舞子式という日本独自の文化を取り入れているところや、ホスピタリティという世界的にも注目されている日本のおもてなし文化に着眼しているところが優れている。前述のIV-Japanさんもおもてなし事業を今後目指されているとのことで、この企画は実現性の観点から見てもありだと思うので進めていただきたい」と言われた。

谷中氏は「ホスピタリティ事業へのニーズは、実際にラオスでも出てきている。それを先取りされているのが素晴らしい。メインタイトルの舞子式についても、その名の通り首都で学び修めた卒業生が各県に出て行って次の展開につながるということが望め、レバレッジが効いている。独自発展が遂げられるのではないかという側面から見てもソーシャルインパクトがあるビジネスである」と評価された。

 どの企画も斬新でユニークであったため審査は難航したが、「なんとかしなきゃ!プロジェクト」の今後の方向性と意識が合致していたことから、上記二つが選出された。

なお、JICA広報課長の小泉氏はこの一連を通し「皆さんのご提案の中からラオスが新しい顔をだんだんと見せてきたと思えた。今まであまり行ったことがないということは、今後行ってみたいという魅力に繋がるのだと、大きな可能性を感じた。ラオス人自身もまだ気付いていない魅力を、皆さんが色んな形で切り取って提示してくれた。これを機にラオスへの関心を深めていただき、またラオス以外の世界の多くの国々と日本との繋がりをも考えていただく切っ掛けになればと思う」と一日を振り返られた。

朝10時から夕方18時までという長丁場のワークショップであったが、ロジカル技法とクリエイティブ技法を応用することで、社会的課題を解決するソーシャルビジネスのデザインも自由に生み出すことができることを体感でき、参加者のみならず開催側にとっても実りの多い、相互に学び深き会であったようだ。

谷中修吾氏プロデュースイベント「まちてん」にBBT大学も地方創生をテーマに出展します。

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