「あなたのキャリアを拡げる"起業体験"」
イベントレポート
「あなたのキャリアを拡げる"起業体験"」
BBT大学は、2015年8月16日に公開フォーラム「毎日新聞社後援 あなたのキャリアを拡げる"起業体験"」を株式会社ウィルフと共催いたしました。当日は、「若者が未来に希望を持てる社会を創る」をミッションとしているウィルフの代表取締役社長・黒石健太郎氏をお招きし、学生時代の「起業体験」の大切さについて講演いただきました。その後、BBT大学の宇田経営学部長より起業家志望の学生が多いBBT大学の紹介があり、実際に起業しているBBT大学在学生の伊藤新之介氏より、起業に至る道のりなどのエピソードを語ってもらいました。同様に、BBT大学に在学しながら起業している細川大己氏からも起業に至る道のりをビデオメッセージで説明がありました。
最後にBBT大学ITソリューション学科の須子先生より、学生の主体性や原体験を大事にする学習法についても説明がありましたので、その模様をご紹介します。
ダイジェスト動画
黒石健太郎氏(株式会社ウィルフ代表取締役社長)
キャリアの選択肢には、「会社から与えられたことをやる」というもの以外に、「自分で新規事業を立ち上げる」という選択肢もある。また、実際に多くの日本企業が今、言われた仕事をこなすだけではなく、自ら事業を立ち上げられる人材を求めるようになってきている。本プレゼンでは、多方面で求められている、自ら新規事業を立ち上げる事が出来る人になるためにはどうしたら良いのかについて考えたい。
大学卒業後、リクルートに入社しキャリア支援と社内起業のプロジェクトに携わった私は、その仕事を通して予想以上に「やりたい事がある」人がいることに気付いた。さらに「自分の力でそれを実現できそう」な人も一定数いることがわかった。しかし、その大半は「大学卒業後=就職」という考えに囚われており、起業を選択肢とする人は殆どいなかった。彼らは、自分がやりたいことを実現する手段として「就職」・「転職」を考えている。「就職」や「転職」があることが大前提で、それを通じていかにやりたいことを実現するか、と考えている人が非常に多かったのだ。彼らの話を聞いていると、「人の会社に入るのではなく、自分が好きにできる環境を作った方が早いのではないか」と感じることも多かったが、就職相談に来ている人は誰ひとりとして自分で事業を起こそうとしなかった。いったん就職活動のレールにのると、期限までに内定を取ることが目下のゴールとなってしまい、それ以外の選択肢をとることがとても難しくなってしまう。彼らがキャリアの選択肢を自ら狭めてしまっていることを、私は非常にもったいないと感じた。
「とりあえず就職して、しばらくたったら起業する」と言って企業に就職する人も多かった。しかし、一度就職するとサラリーマン化してしまい、その後実際に起業するという人はほとんどいないのが現実である。やりたい事を持って入社した会社でも、入社してみると組織から指示されて行う仕事に慣れてしまい、自分がやりたい事がなかなかできず、そのうち忘れてしまうのだ。
こうした背景を踏まえ、誰でも「起業」を選択肢の一つに加えることができるような支援を行いたいと考えたのが、株式会社ウィルフ立ち上げのきっかけだ。具体的には、この会社を「若者たちが自分自身で主体的に行動するための支援」を行うプラットフォームにしたいと考えたのだ。
そもそも「起業している」とはどういう状態を指すのか、突き詰めて考えると難しいことではない。行動を始めた時点でそれは「起業」なのだ。一歩踏み出せばいいだけの話なのである。
しかし、日本の起業率は3%前後と世界各国と比較しても低い水準にある。就職活動でも、会社勤務でも、基本的には人から決められたことを決められた期日でやる、ということが多い。しかし、起業するとなると、締め切りや目標を自分で決めなければならない。そして、自分で決めた締め切りや自分で決めた目標を自分で守り実現していかなければならない。そこに本質的な難しさがあるのではないだろうか。
起業しない人に足りないものは、①「CAN」(出来そうだと思う)、②「WANT」(リアルな選択肢として捉える)、③「SHOULD」(テーマを見つける)の3つであると言える。逆に言えば、これら3つを揃えれば起業に踏み出すことができるのだ。
実際に起業している人はどのようにこれら3つのハードルを乗り越えたのか。彼らには、共通点が2つあった。1つ目は在学中に起業を経験していること、2つ目はスモールビジネスなどの起業に準じる経験(起業体験)を通して小さな成功体験を重ねているということ。
学生起業やスモールビジネスの体験がある人は、その後に本格的な起業に踏み出す傾向が強いと言う。既に起業している人を対象としたある調査では、学生時代に起業を経験をした人は31%もいたのに対し、ビジネスコンテストに参加した経験を持つ人はたった6%しかいなかったという結果が出ている。ビジネスコンテストに参加するというのはプランを頭で考えるという作業がメインであり、実際に行動しなければならない「起業」とは本質的に違うのである。
スモールビジネスで成功体験を収めるための良い方法として、学生時代に文化祭やイベント企画などに取り組んでみる、というものがある。これらの活動を、ビジネスや経営スキルを学びながら本気で取り組むのである。
実際、自分の周りに、文化祭で出店したことがきっかけで起業した人がいる。
彼は出展する際に、既に社会に出てコンサルティングの仕事をしている先輩などに協力してもらい、徹底的にビジネスフレームワークを学んだ。そして、過去の成功事例の共通項を分析した上で他店と差別化できる商品を企画、販売し、他店舗が10万円程度の売上の中、約30万円もの売上を上げることに成功した。彼は卒業後、一旦は外資系コンサルティング会社に入社したが、この成功体験をきっかけにその後起業へと踏み出した。
以上のように、ビジネスの分野において成功体験を積む事から始めるのが良いと考えている。最初は小さくても構わない。年を取ってから急に起業しようとしても、現状とのギャップが大きいほど踏み出しにくくなるが、学生の文化祭などであれば誰にでも簡単にチャレンジできるからだ。株式会社ウィルフに賛同するメンバーであるサイバーエージェント藤田晋社長、ガンホー孫泰蔵会長、元衆議院議員杉村太蔵氏も、小さなビジネスから規模の大きなビジネスに発展させている。
出来る限り早いタイミングで「起業体験」を積み、とにかく学生起業に踏み出してほしい。その上で、卒業時に自分の選択をしてほしい。一旦就職するのも良いし、本格的に起業するのも良い。学生時代に起業を経験しておくことで、卒業時の選択肢が「就職」のみではなく、「就職」も「起業」も視野に入れることができるようになる。それが重要なのである。
新事業創造思考のBBT大学生
BBT
大学 経営学部長 宇田左近
大学生時代、夏休みに軽井沢にある友人の大きな別荘を利用して、富裕層の子女向けに夏休みの宿題を手伝う学習塾を設立した経験がある。車での送迎付きの塾として軽井沢新聞で宣伝した結果、中高生から大学生まで多くの申し込みがあった。生徒数の増加に伴い、次第に講師が足りなくなった。必要に応じて講師を増やしていったが、結局学生同士で規律を守ることが難しく、最終的には赤字に終わらせてしまった。利益を上げることはできなかったものの、ビジネスとは何かを考えるためには、非常に良い経験だったと思う。身を持ってコスト管理の重要性を学ぶことができたし、ビジネスを一緒に行う仲間の大切さも痛感した。当時は起業という言葉も無く、面白半分で自然にやりたい事をやっていたという感じだったが、生徒が増えたときの喜びは未だに忘れられない。
その後、会社経営の道には進まなかったが、今考えてみると当時から教育に縁もあって、BBT大学の教員という今の仕事につながっているように思う。自分が直観的に面白そうなだと感じたことをやってみることで、自分の適性が分かることがあるのだ。
今自分が携わっているBBT大学はオンラインの大学であり、学生にとっては自由に使える時間が非常に多い。そのため、本学の学生は、在学中に起業をはじめとしたスモールビジネスなども経験しやすい環境にあると言える。
本学の学生は、約3割が高校卒業後、社会に出る前に入学した学生、約7割が一度社会に出て働きながら受講している学生となっており、特に高校を卒業したばかりで仕事をしていない学生にとっては、自由な時間を好きにデザインすることができる。実際に、世界各国を旅している学生、長期間のインターンシップに参加しビジネス経験を積んでいる学生など、通常の大学に通学しているとできないようなことを体験している学生も多い。
「教えない大学」をキャッチフレーズとし、「答えのない世界でひるむことなく自ら考えて行動する力を徹底的に鍛える」をコンセプトとしている本学では、自発的に行動できる学生の育成を重視しており、学生が自分で考えて行動する機会を多く提供していることも特徴の一つだ。時間と場所から解放された環境にある点に魅力を感じて本学に入学する学生も多く、もともと何かやってやろうという気持ちを持って入学してくる学生も多い。
BBT大生に実施したアンケートでは、約6割の学生が「新しい事業の創出や新規事業の拡大」をやってみたい、または既にやっていると回答している。本学の卒業生には、株式会社JIN-Gに入社し、単身で同社のベトナム法人を起ち上げて人材育成プログラム設計している佐々木あや氏や、BBT大学の卒論がきっかけでフィリピンの花の農場長として経営全般に携わる辻本諒太氏などがおり、既に世界中で活躍している卒業生や在学生が誕生している。
例えば、佐々木氏は在学中には授業を受けながら28か国を旅しているが、学生時代のこういった体験、自分ならではの体験をたくさん得ることで、自分の言葉で話せることが増えてくる。自分の経験を踏まえて話すことができるので、社会人としての会話の深みも増していき、ビジネスにも生きていくと考えている。
本日は、BBT大学在学中に起業した学生を二人紹介する。一人は笑いに特化したメディアを立ち上げ、日本一のシェア力を誇るほどになった伊藤新之介氏、もう一人は食を動画で共有するアプリをBBT大学の仲間と開発しつい先日ローンチしたばかりの細川大己氏だ。
笑いに特化したメディア「笑うメディアクレイジー」
伊藤新之介氏(BBT大学生、株式会社LAUGH TECH代表取締役)
高校時代は、数学者を目指していたが、東大、京大受験に失敗。同志社大学に入学したものの、当初はゲームセンター通いの日々を過ごしていた。しかし、学歴へのコンプレックスを理由に一念発起し、在学中にオンライン個別指導塾をオープン。オープンキャンパスなどで地道にビラ配りを行って生徒を集めながらがんばっていた。ところが一緒に会社を立ち上げたメンバーが教育よりもビジネスに比重を置くようになってしまったことから、自分の気持ちは一気に会社から離れてしまい、結局、立ち上げから2年ぐらいで友人に事業を譲ってしまった。これが自分にとって最初の起業体験だ。
その後、親に黙って同志社大学を退学したが、親から大学は卒業するようにとアドバイスされ、オンラインで授業を受けられるBBT大学に入学した。
当時私には、就職、起業、フリーランスという3つの選択肢があった。しかし、大学卒という肩書はまだないため就職は難しい、フリーで一人で食べていけるような抜きんでた技術もない。そう考えると、必然的に起業という選択肢が残った。
学生起業した経験があったことも後押しとなり、起業して生計を立てていくということに何の疑問も感じなかった。起業家の周りで大きなお金が動くシリコンバレーに憧れ、日本で最も資金が流れる場所、ということで地元の京都から東京に居を移した。
BBT大学に入学後、たまたま同級生から300万円の支援を受けることができ、事業内容も決まらないままに起業したのが二回目の起業だ。最初は韓国のマンガサービス「webtoon」を参考にした事業を立ち上げたりしたがなかなかうまくいかなかった。いくつかの失敗の後、アメリカの「Buzzfeed」というサービスをモデルにしたサービス「笑うメディア・CuRAZY(クレイジー)」を立ち上げると、初月から900万PVを達成、サービスは軌道に乗り始めた。
CuRAZYは、2014年に開始した、月間読者数750万人、月間4000万PVを誇る、笑いに特化したメディアだ。facebookやtwitterによる強い拡散力が特徴である。サイバーエージェント・DeNA・Skyland Ventures / East Venturesから計1.1億円の資金調達を行い、1年で2倍以上成長した。収益はバズマーケティングのコンサルティングなど、ウェブメディア以外の所から得ているというのが現状だ。CuRAZYを運営するのは株式会社LAUGH TECHで、現在社員は9人ほど。平均年齢は25~27歳ぐらいで若い会社である。
私が事業を行う上で大切にしていることは「問題に対して仮説を言語化し、行動の上で検証する」事だ。かつて数学者を目指していた時代、数学が得意な人ほどペンを多く動かしている事に気づいたことがきっかけで、仮説になり得る情報を見付け出すこと、仮説を立てること、仮説を検証すること、の3つのプロセスを重視するようになった。数学が苦手な人ほどとにかく頭だけで考えて、散々考えた挙句、表面的な類推しか出来ない傾向があるようだが、私はこれだけは避けるようにしている。さらに、仮説を立てて検証するというプロセスは、できるだけ短いサイクルでまわすことが大切だ。このあたりは、BBT大学で受けた「問題解決」の授業が非常に役に立っており、ここで学んだフレームワーク等は今でもよく使っている。
食の動画共有アプリ「GOCCI」
細川大己氏(BBT大学生、株式会社イナセ代表取締役)
自分は、北海道札幌市出身、BBT大学3年在学中、20歳で、株式会社イナセの代表取締役をしている。
本日は、起業を志したきっかけ、起業のためにした行動、今、取り組んでいることの3つを話したい。未熟な自分だが、僕等身大の経験を話したいと考えているので、何か起業に関して感じ取って頂けたらうれしい。
多くの人から起業したきっかけについてよく聞かれるが、確固たる原体験があるわけではない。気づいた時には当然のように起業家を目指していた。
自分は中学・高校と合唱を6年間続け、高校3年生の時には、全国の音楽コンクールで優勝した。また同様に声楽もやっており、甲子園北海道予選の開会式で大会歌を独唱した経験がある。それほど音楽に打ち込んでいた。それは純粋に音楽が好きだったからだ。どちらかというとソロで歌う声楽よりハーモニーや音の広がりを感じられる合唱の方が好きだ。合唱の全員で1つの音楽を創る感覚がとても好きだったからだ。
その経験からか、「音楽とビジネスは似ている」と考えている。まず、どちらもチームでものづくりをしていかなければならない。例えば音楽は、メンバー各々が長所を際立たせ、かつ、お互いを補い合わなければ、良い曲は創れない。ビジネスも同じで、決して1人で成し得るサービス作りは存在しないと考えている。さらに、テーマをもっているという点でも音楽とビジネスは共通点がある。音楽には、その曲で表現したいテーマがある。仕事においても同じではないだろうか。サービスはただのツールではなく、ある一点で大きなテーマを持つから他との違いが出てくるのだと思っている。
そんな自分が起業するために取った行動の中で一番大きいものは、やはりBBT大学に入学した事である。自分は入学直前に某有名私立大学に受かっていながら、最終的にBBT大学への入学を決めたのだ。
その理由として、在学中に起業するために「働きながら学びたい」と考えたことがあげられる。在学時に会社を起こそうと考え、会社を起こす前に会社というものはどう動いていて、どこが面白くて、何が大変なのかを、経験として知っておきたいと考えていた。
実際、BBT大学に入学してすぐの3ヶ月は、農業にも興味があった事から、農家でお手伝いとして働いた。9月からは、BBT大学の関係者が起業したばかりのIT教育系ベンチャーの会社でインターンとして働かせてもらった。この会社は、オンラインのプログラミングスクールを運営しており、ここでの経験は自分にとって非常に大きなものとなった。立ち上げ時に社長の近くで作業をさせてもらったことで、会社を立ち上げるとはどういうことか、社長とはどういう仕事なのか、自分なりに考えることができた。
その結果、自分の会社は、創業時の悩みが比較的少なく、スピーディーに設立することができた。インターンなどで働いた経験から、悩んだときはすぐに先輩起業家に相談できたり、知り合いの税理士に登記を手伝ってもらえたり、インターン先のプログラミング教育サービスに携わっていた事で仲間を見つけることができたり、色々なメリットがあった。
創業期の1年間は、青梅でメンバーと寝食を共にしながらサービス開発に励んだ。特に経験の浅い学生起業家は、創業者間のもめごとなどが起こりやすいと聞いたので、なるべく多くの時間を共有するようわざわざ都心から遠めの青梅を選んだ。知識も技量もない、本当に「ひよっこ」だった自分たちの下積みには青梅はぴったりだった。時には川で遊んだりしながら、互いに成長できたと思っている。
2015年4月上旬には、森永製菓主催のアクセラレータープログラムで優勝し、今は森永製菓のバックアップを受けることができている。
さらに8月上旬にはコロプラの100%子会社のコロプラネクストという会社からも資金の調達できたことを機に、オフィスを渋谷のシェアハウスに移転させた。弊社は現在5人のスタッフで活動しており、全員同じBBT大学の学生だ。
今取り組んでいるのは、食のリアルを伝えるアプリ「Gocci」の開発・運営だ。このサービスで、「食×動画」という新しい領域に挑戦したいと考えている。グルメメディアの役割は、飲食店が「思ったより不味かった」とか「思ったより狭かった」という現実と理想のギャップを取り除く所にあると思っている。その為に必要なのは、良くも悪くも「リアルな情報」だ。情報を伝えるには写真は綺麗過ぎ、かつ、断片的過ぎ、リアルさが低い。動画を使っているGocciなら、それらの欠点を補うことができると考えている。
グルメ動画アプリGocciを、自分たちは「グローバルなグルメアプリ」という世界観で展開している。今までグローバルなグルメアプリというのは存在していなかった。それは、文化や制度といった隔たりをなくし、国境を越えて楽しめるサービスを実現するのが難しかったからだ。Gocciはグローバルなグルメアプリになることを目指している。視覚的で直感的なグルメ情報こそが、美味しさやその店の良さをよりリアルに伝えていけると確信している。そして、その確信を形に出来る動画、視覚だけで理解できる動画、それを最大活用することで国境を越えて楽しめるサービスGocciの確立を目指したい。
思う存分失敗できる学び場、BBT大学
須子善彦(BBT大学経営学部ITソリューション学科専任講師)
BBT大学経営学部ITソリューション学科は、経営学とITの両方が分かる人材を作るアウトプット志向の学科だ。ITの' I 'はインフォメーション(Information)だけではなく、イノベーション(Innovation)の ' I 'でもある。未来を創造する学科で、「思う存分失敗できる学科」をコンセプトにイノベーティブなことを自ら開拓できる人材を育成する学科を目指している。IT起業家をはじめとする人材を輩出することを目的としている「聞く」「学ぶ」「帰る」といったスタイルではなく、「感じる」「シェアする」「聴き合う」ということを大切にしている。
本学科は、おそらく日本で初めて「リーン・スタートアップ・ハッカソン」を開催した。皆で集まってプレゼン形式で新しいモノを作る「ハッカソン」(「ハッカー」と「マラソン」)にビジネスコンテストを組み合わせた大会である。1日で完結する他のコンテストとは違い、2~3ヶ月かけてアイデアをブラッシュアップし、BBTのオンライン環境を利用してメンターが支援していく形式を採った。
ITソリューション学科はオンライン大学でおそらく初のプロジェクト学習を取り入れており、学ぶだけでなく、実社会で実践していくことを奨励している。この「リーン・スタートアップ・ハッカソン」も、プロジェクト学習の一環であり、ITソリューション学科の学生が企画に関わり、実際に参加して起業を目指している。
これらの背景にあるのは「マイプロジェクト」という教育手法だ。この手法では、「Will / Want」=自分のやりたいこと、「Should」=世の中が必要とすること、「Can」=自分のできること、という3つの段階に分けて物事を考え、できるかどうか「Can」よりも、自分が欲しいこと、やりたいこと「Will / Want」を優先してプロジェクトを考える。そして、実際にやっていく過程において、社会にニーズがあるのか「Should」を見ながら広げていく、というフレームワークで進めていく。このアウトプット学習では、学生ひとりひとりが、自分がやりたいことを考えて実現させていく。教員は、それらが実現できるフィールドを提供するという形でサポートしていく。
「マイプロジェクト」のプロセスは、「ストーリーを語る」→「共に一歩踏み出す」→「仲間として支え合う」となっている。起業する際は、まず自分の思いを語る「ストーリーテリング」が重要になる。まずはマイストーリーを作り、色々な人にプレゼンすることで他人からフィードバックを貰い、ブラッシュアップしていくのが良いと思う。さらにストーリーを具体化していこうとすると、自然と行動が伴ってくる。その流れで実際に起業に向けた行動を始めることで、先輩起業家に支援の手を差し伸べて貰える事も多い。ここで重要なのは、「共に」一歩踏み出す、仲間として支え合うことである。変化や失敗、立ち止まりはどんどん経験すれば良く、プログラムの成功より、自分自身が満足して人生を生きているかが重要である。ITソリューション学科はプロジェクト学習によって思う存分失敗できる学びの場を学生に提供している。
私自身、大学は慶応義塾大学のSFCという自由な校風の大学で学んだが、その雰囲気はBBT大学に非常に似ている。自由な環境の中、「良い意味で変な仲間」に出会ったことで、自分の世界がさらに広がっていった。
その後、2004年に会社を設立し、BtoB向けのSNSサービスを始めた。ユーザニーズ検証をしっかり行い、次第に顕在化してきたニーズから今日のSNSの原型のアイデアに至ったが、一緒に会社を立ち上げた仲間の賛成を得られず、全てを実現することはできなかった。次に、旅を通じて起業家育成をするソーシャル・ベンチャー「BADO! PROJECT」を起ち上げた。他にも地域起業を志す若者の為のシェアハウスなども経営している。
今までに3度の起業をしてきたが、そこから「本当の失敗は諦めてしまうこと」ということを学んだ。エジソンが「失敗したわけではない。それを誤りだと言ってはいけない。成功に繋がる勉強をしたのだと言いたまえ。」という言葉を残しているが、このような失敗は成功のもと、という考え方が大切だ。私自身も教育者ではあるが、同時に常に「挑戦者」であり続けたいと考えている。