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2026/7/10

    BBT大学の窪田 望教授の映像作品《AIが消し去る声》が、アルス・エレクトロニカ賞2026にてHonorary Mention(栄誉賞)を受賞しました

    BBT大学 客員教授であり、現代美術家・株式会社Creator's NEXT代表の窪田 望教授による映像作品《AIが消し去る声》が、世界的なメディアアートの国際コンペティション「アルス・エレクトロニカ賞2026」のDigital Humanity部門において、Honorary Mention(栄誉賞)を受賞しました。

    本賞は、芸術・テクノロジー・社会の関係を問い続ける世界的なアワードとして知られ、2026年は106カ国・4,329件の応募の中から選出。窪田教授はDigital Humanity部門における唯一の日本人受賞者となりました。

    受賞作《AIが消し去る声》は、AIの進化による利便性の裏側で、無自覚に進むマイノリティの排斥や、AIアルゴリズムに潜むアンコンシャス・バイアスをテーマにした作品です。AI時代において「テクノロジーをどう使うか」「人間や社会とどう向き合うか」という重要な問いを投げかけています。

    5本ではない指は「修正すべきエラー」なのか

    <生成AIで手の画像を出力すると、その手が5本指ではなかった。>

    ある時、AIの専門家である窪田教授が経験した出来事が、本作を制作するきっかけとなりました。最近では「5本指ではない手」がAI生成されることは少なくなりましたが、そんなAIの"進化"の背景には、5本指ではない手をエラーとして排除するフィルターの存在があります。

    「そのプロセスで排斥されているマイノリティの存在があるのではないか?」

    そんな疑問から、窪田教授は生まれつき5本指ではなく暮らす裂手症の当事者やご家族、医療従事者の方々との対話を重ねながら『AI社会の背後にある分類の暴力性』に迫っていきます。当事者の身体を一方的に記録し、説明するのではなく、AI開発に関わってきた作家自身が、自らの中にあった「正しい身体」への無意識の前提と向き合っていく過程が映し出されていきます。

    出演(敬称略):浅原ゆき (NPO法人Hand&Foot) 大塚悠 (NPO法人Hand&Foot) 川端秀彦 (南大阪小児リハビリテーション病院 院長) すらいむ (インフルエンサー、起業家) 映像制作:黒川雄斗、黒川みなみ

    アルス・エレクトロニカ賞 審査員団講評

    《AIが消し去る声》において、窪田教授は、コード化された規範に収まらない身体が体系的に消去されていくという、静かな暴力を明らかにする。NSFWフィルターの回避を含むデータセットのフォレンジックな監査と、裂手症とともに生きる人々へのインタビューを組み合わせることで、本作は、可視性をめぐる政治とデジタル上の尊厳を問い直している。

    AIのバイアスをめぐる議論を抽象的な倫理の問題から、身体をもって生きる人々の現実へと引き戻し、AIが差異をエラーや猥褻なものとして誤認する構造を示している。審査員団は、本作が安易な技術的解決主義を拒んでいる点を高く評価した。

    AIエンジニアでもある窪田教授は、自己省察的な方法論を用い、制作過程において自らの内にある無意識のバイアスを露呈させることで、システムだけでなく、その作り手自身をも批判の対象としている。AIによる欠落は、単なる空白ではない。それは、コードの中に堆積した社会的な意思決定である。

    本プロジェクトは稀有な明晰さをもってこの問題を語り、アルゴリズムが消し去ろうとした人々に、人間としての豊かさを取り戻している。

    AIが映し出すのは、人間が積み重ねてきた「分類の暴力性」

    本作品と同テーマを扱った巨大なタペストリー作品≪NSFW≫

    ≪NSFW≫の接写写真。AIがエラーとして排除した手の画像が無数に印刷されている。そこには裂手症と思われる手も含まれている。

    近代以降、写真、映像、医学的記録、統計、アーカイブといった技術が、人間の身体を記録すると同時に、分類してきました。そこでは、何が標準で、何が例外なのか。何が正常で、何が異常なのかという境界がつくられてきました。現在、その分類の一部は、人間の眼からアルゴリズムへと委ねられつつあります。

    しかし、AIが行う判断は、人間社会が蓄積してきた価値観や偏見、分類の歴史が反映されたものです。

    窪田望教授コメント

    本作は私たち自身が受け継いできた「見ること」と「分類すること」の暴力性を問い返す作品です。AIや文明の進化によって、人間は何を残し、何を見えないものにしてしまうのか。窪田教授はAIを通して、身体、分類、不可視化という、美術が繰り返し向き合ってきた問題を現代に問おうとしています。

    本作は、単にAI活用に警鐘を鳴らすための作品ではありません。むしろ、私たちの時代がどのように「人間」の輪郭をつくり、誰をその内側に置き、誰を外側へ押し出しているのかを問い続けるための作品です。

    AIは、便利な道具であると同時に、私たちの社会がすでに持っている価値観や分類の仕組みを映し出す鏡でもあります。だからこそ私は、AIそのものを批判するのではなく、AIを通して、私たちが無意識のうちに前提としてきた「正常さ」や「人間らしさ」の境界を見つめ直したいと考えています。

    このたび本作が国際的な評価を受け、学際的な議論の出発点となり得ることを大変光栄に思います。同時に、これまで本作に関わり、声を寄せ、支えてくださった多くの皆さまに、心より感謝申し上げます。

    プロフィール

    窪田 望 (くぼた・のぞむ)
    BBT大学 経営学部 客員教授

    株式会社Creator’s NEXT 代表取締役
    米国NY州生まれ。慶應義塾大学総合政策学部卒業。15歳の時に初めてプログラミング開発を行い、ユーザージェネレーテッドメディアを構築。大学在学中の19歳の時に起業し、現在20年目。 東京大学大学院工学系研究科技術経営戦略学専攻グローバル消費インテリジェンス寄附講座 / 松尾研究室(GCI 2019 Winter)を修了。米国マサチューセッツ工科大学のビジネススクールであるMIT スローン経営⼤学院で「Artificial Intelligence: Implications for Business Strategy」を修了。 2019年、2020年には3万7000名の中から日本一のウェブ解析士(Best of the Best)として2年連続で選出。

    窪田望 公式サイト
    https://nozomukubota.com/
    窪田望のAI倫理研究所
    https://nozomukubota.theletter.jp/
    Creator's NEXT
    https://cnxt.jp/

    教員プロフィールはこちら

    この記事の執筆者

    ビジネス・ブレークスルー大学

    BBT編集部
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