【BBT大学対談(3/3)】常に問いかけるのは、何のために大学に行くのか~オンラインだからこそできる挑戦~
教務スタッフが教育をプロデュースする
山本 BBT大学では教務の方たちが先生の下請けではなく、教育のプロデューサー的な役割を果たしていますが、具体的にはどのようにされているのですか。
白崎 教務担当職員は10人くらいで、600名の学生をサポートしています。教務職員が大前提としているのは、教育というのは手間暇がかかるものだということです。10年前に私がBBT大学に入職した時に、大前研一学長が100%オンラインで完結できるようにと言っていました。私はそれに違和感があって、ウェストポイントのリーダーシッププログラムをBBT大学の社会人研修に導入するときにも大学として初めて対面の集合研修と1on1(※1)のコーチングを取り入れたんです。その時、大前学長は「オンラインで完結できるはずだ」と怒っていたんですが、私はこれがこれからの教育の解ではないかと思ってやってみた結果、圧倒的に学生の満足度が高く、しかも学生の成長が見て取れました。それで大前学長も「これからの時代はブレンディング(blending)だ!」と変わっていきました(笑)。これはスタッフの関わり方が重要だと感じた事例でした。
※1 1対1で、個別でという意。
また、オンライン授業だと学生がいつログインして、授業で何回発言したなどのデータが全てわかります。ただそれらは表面的な事象であって、その背景にある真因を見にいこうというのがスタッフで共通しているスタンスです。
そのためには、一人ひとりと個別に話すことが欠かせません。ですから、教務担当職員は科目運営やイベント運営をしながら学生と近い距離でフィードバックしたり授業をデザインしたりしています。例えば、授業の始まる前に教員とLAと教務スタッフでミーティングをして、「前回こういう形で授業をやったけれど、あまり上手くいかなかった部分があるからここを改善しよう」とか、「フィードバック講義(※2)を6回目に行っていたけれど遅すぎるので3回目にしよう」というようにPDCAサイクルを回すということを行っています。
※2 BBT大学で取り入れている授業形態の一つ。数回の講義を経て、教員が学生の学習状況を踏まえて解説を行ったり、現在進行形の新しい情報を補足したりして、これまでの学生の学びをフィードバックするための講義。
そうして変えた結果が良かったのか悪かったのかを、学生との日々のコミュニケーションを通じて把握します。学生との1on1の対話は昨年1年間で1379件もありました。月にして100件以上ですが、その相談の担い手は大半が教務スタッフですが、株式会社ビジネス・ブレークスルーの社長や大学の副学長なども参加しています。
このように手間暇をかけつつ、その学生がどこでブレーキを踏んでいるのか、立ち止まっているのかを把握し、担当職員が解決策を提案していきます。担当職員だけでは解決できない場合には私やコーチングの資格を持ったスタッフ、場合によっては先生も含めて関わることにしています。大変ではあるのですが、こうした関わりが功を奏しているのだと思います。
山本 600人の学生に10人の教務というのは、他大学と比較すると大変多いと思います。これが6000人の大学だと教務が100人という比率ですね。だからこそ、それだけ手厚く対応できているのだと思います。
次に、学生生活へのフォローアップ体制と教育改善の仕組み、学生の声をどのように集約し反映させているのかについて伺いたいと思います。これは高校の進路指導の先生向けの大学の説明会でもよく出る質問で、知りたいと思っている方が多いと思います。学生の声を収集するだけでなく、声にならない現象も起きています。その背景を観察したりデータ分析されたりしていることは、先ほど伺いましたが。
白崎 科目に関しては終了時にアンケートを取っています。ただ、過去は回答率が15%程度のこともありましたが、直近では30%にまで上がってきています。回答率を上げるために、質問項目を厳選するなどの対策を行いましたが、それよりも重要なことは回答した内容が実際の改革に活かされている実例を示すことでした。回答したことが改革につながると分かれば、協力しようと思ってくれるからです。
具体的にはアンケートの内容を改善に活かし、半期に1度副学長がその改善内容を動画で学生に配信しています。皆さんの声が科目に反映されているということを学内に循環させて科目運営に活かす仕組みを構築しています。
科目だけでなく、「事業構想ラボ」や「アイラボ」などの課外活動なども積極的に推進しています。また「もくもく会」という学生が集まって「もくもくと課題に取り組む」という会ですが、学生の参加も最初は数人でしたが、多いときには30人くらいまで増えてきました。こうしたことがあるから、こちらが発信した時に学生たちがリアクションしてくれる関係が出来上がってきています。つまり、ある1つの決定打があって学生が反応してくれるようになったというよりも、様々な施策を様々なスタッフがやり続け、それがつながってきているのだと思います。
また、教務スタッフにとっての仕事は、何か先生を支えるお手伝いのようなことではなく、自分のプロジェクトになっていて、それをブラッシュアップするのが自分の責任だと思っていることが大きい。教育をプロデュースするという意識を持っています。先生のことも学生のことも両方知っているのは教務なわけですから。
山本 コロナ禍で学生がどう大学に馴染んでいくかが問題になっていますが、BBT大学の場合はどうですか。
白崎 入学前後の部分に一番力をかけていて、「オンライン学習入門」という科目を最初に受けてもらいます。そこで5人くらいの学生を1グループにしてホームルームを開いています。この5人は意図的に同質性の高いメンバーで構成しています。そこに教務スタッフが入って「何を目的にBBT大学に入学したのか」ということから始めます。その裏で、「スタートアップゼミ」という科目が走っていて、BBT大学の先生は敷居が高くないこと、いかに「関係性の質」(※3)を高め本音で話し合えるかが学びの質にもつながっていくことを理解していきます。そのためにフィードバックが重要であること、自分の考えを主張していくことが重要だということ等を共通認識にしていきます。そこである程度コミュニティが形成されてからスタートできることが重要だと思います。また専業学生は、全体とは別に入学前から専業学生のコミュニティを作る工夫をしています。
※3 ダニエル・キム教授による「成功循環モデル」での考え方
山本 コロナ禍で一般に学生が抱えている問題を文部科学省が調査しています。そこでの問題は6つあります。それは、孤独感、孤立感、オンライン授業への不安、キャリアへの不安、将来への不安、経済的困窮です。
同じ質問項目でBBT大学の学生に対して調査をしてみました。すると、支援が受けられないことからくる孤立感についてはBBT大学の学生は随分低いという結果(※4)が出ました。
これは学生が困っている時に、一般の大学よりもはるかに高い確率で職員に相談ができていることが明らかになっています。さっき白崎さんが言われた取り組みの結果として、孤立感が低いという現状が生まれているのだと感じました。
※4 BBT大学オンライン授業に関する実態調査
https://bbt.ac/magazine/5316
またオンライン授業への不安も低いという結果が出ています。この不安は2つあって、1つは学習効果への不安です。これについてはBBT大学の学生はオンライン大学としてのノウハウを享受できている差がはっきりと表れています。もう1つは、グループワーク等の時に生じる、オンライン上の学生間のコミュニケーションに関する不安です。代表的なのがZOOM授業等での顔出しです。いろんな大学で、顔出しに躊躇するという現象が起こっています。
では、学生たちが顔出しできる授業とは何かと言えば、1つは学生間の関係性が確立している授業です。2つ目が先生のオープンさです。この2つで心理的安全性が整ってこそ学生が安心して顔出しするようになります。これを欠いたまま「みんな顔出ししてください」と言っても、誰も顔出ししません。BBT大学が入学前後の最初の段階を重視されていて、先生の敷居は高くないと伝えたり、グループ作りでは同質性を重視しているというのは、この心理的安全性をしっかり作っていくという取り組みになっているのだと思います。
私自身も大正大学で1年生向けの授業を担当していますが、心理的安全性を意識して形成していく効果を強く感じています。例えば、授業でのグループ作りに当たっては事前にアンケートを取って、その内容を元にして60人を9つのグループに分けています。リーダーシップを取りたがる人ばかり集まるとグループワークはうまくいきませんし、逆にリーダーシップを取るのが苦手な人ばかり集まってもうまくいきません。また、心配な学生を1チームに複数にならないように分散させています。そうした細かい配慮をすることで、1年目の大学生活のクオリティが違ってくるからです。
白崎 BBT大学でも入学前から学生一人ひとりを把握しているので、グループ構成はそれに基づいて行っています。また先輩学生2名、新入生2名の合計4名で支え合うバディ制度も設けています。
「教えない大学」で「答えのない問いを解く」
BBT大学の主体性を育てる仕組み
山本 BBT大学ではどのように主体性を育てているのでしょうか。またその仕組みについて話してください。
白崎 自分が何のために学んでいるのか、自分がどうなっていきたいのかを自分なりに定義することが一番重要だと思っています。そこに思いきり舵を切っているのがBBT大学の特徴だと考えています。
そのために「セルフリーダーシップ」という科目を設けたり、大谷翔平選手や菊池雄星選手のメンタルコーチだった原田隆史先生に「自立型セルフコーチング」という科目を設けてもらったりしています。
自分で何かを選択する自己決定の重要性に気づくことを重視しています。専業学生で言えば、これまでは与えられたことをこなす、解くということが多かったわけですが、ABCDという選択肢があってなぜ自分がAを選択したのかを考える、主体性を育てることはそのことに尽きると考えています。
山本 高校の新学習指導要領でも主体性が重視されていますし、OECDでも2030年に求められるコンピテンシーを検討する「Education2030」が始まっていますが、そこでもAgencyという概念が重視されています。これは「責任ある行動を起こす力」「自己調整」「責任感」という言葉が当てられますが、主体性に近い概念です。BBT大学でそれをいかに育んで行っているのか、さらに掘り下げていきたいのですが。
白崎 「教えない大学」で「答えのない問いを解く」ということが共有されています。自己決定、実践、内省が重視されています。何かを実践したら必ず、何のために行っているのかに立ち返ることを重視しています。主体性とは何かという定義も、そしてそれを育てることも難しいとされていますが、それは物事を「自分事」として捉えることだと思います。自分事にならなければ、どんな有用な知識もスキルも宝の持ち腐れにしかなりません。そもそも解くべき課題も他人事であるかぎり、迫真性を得ることができません。
その意味で、まず「自分事」にするという考え方を徹底した上で、それを1on1のチュートリアル教育がサポートする、それがうまく噛み合っているのだと思います。一例をあげると、BBT大学にはポケモンジャパンチャンピオンシップスの元チャンピオンが学生として在籍していますが、彼が先日も副学長、カリキュラム委員長の大原先生、そして私を巻き込んで1名対3名でミーティングを開いていました。彼は、eスポーツを教育に落とし込むことを自分のテーマにしているからこそ、自ら能動的に働きかけてこうしたミーティングを開いているわけです。
また、18歳から60歳までの年齢幅の学生が在籍していますが、同じ講義を受けたからといって同じ気づきがあるわけではなく、学生の現在の立ち位置に応じた学びがあるはずなので、「あなたの場合だったらもっとこんなことを学んだほうがいい」と先生やLAや教務が関わってアドバイスをしています。
山本 面談をしている大学は多くあります。でも、就職活動の時期までは学生が目的意識を持っていなくても当たり前と考えている大学も少なくありません。今のお話しから、BBT大学は学生が目的意識を持っていなかったり、ぶれていたりすることがあれば、とてもビビッドに的確に対応していると感じます。
白崎 就活というと、先日面接でことごとく落ちたという学生から相談を受けました。その学生はアメリカの大学とオンラインでダブルディグリー取得を目指しているのですが、彼のモヤモヤを訊いていくと、その会社に合わせた面接をしているということが正体だということが分かりました。実は私は前職のリクルートで採用面接をしたこともありますが、その際にも、こちら側に合わせてくれるような人材をよしとはしていませんでした。その他にも依頼されて三井不動産やキリンビール等の面接を担当したこともありますが、「その会社じゃなくては駄目なんです」というスタンスの人は落とされるよという話もしました。
そうではなくて、自分のスペックを自覚していることが大切なのだということです。車に例えれば、エンジンのスペックがこうで、ハンドリング性能がこうで、ということが分かっていれば、ダカールラリー(※5)に向いているのか、サーキット走行に向いているのかが自ずと分かるはずです。そもそも何のための就活なのか、大手企業に入ることが目的なのか、それとも仕事を通じて自分自身が成長し、活躍して社会にインパクトを与えられることが目的なのか、という本質的なことにその学生も気づいていったわけです。これもやはり「自分は何者か」に立ち返ることで得られた解でした。そのタイミングを見逃さないのがBBT大学の強みだと思います。
※5 灼熱の砂漠や硬い岩場の連なる山岳地帯など、道なき道を走破するクロスカントリーラリーという競技の一つ(https://www.toyota-body.co.jp/dakar/about/より引用)
BBT大学には、こんな人にこそ入学してほしい
山本 BBT大学は、昨年は総合型選抜で入学する学生が増えて例年の5倍くらいになりました。その受け止めはどうですか。また他大学からの編入する学生もいますが、どういう学生に来てほしいですか。
白崎 5倍になったことをどう受け止めるか、というとまだまだ全く少ないと思っています。BBT大学のポテンシャルから言えばこの50倍の学生が来てもいいと考えています。そこが私たちの発信の少なさ、下手なところだと受け止めています。
以前は、専業学生がBBT大学にエントリーしてくると、保護者や高校の先生が「何てことをしてくれるんだ」と連絡して来られるケースもありました。今期は、逆に保護者や先生から「BBT大学を勧められました」という学生が多くいました。その変化に注目しています。この対談のような内容をしっかりと保護者や高校の先生方に発信していくことで、もっと保護者や先生に勧められたという入学希望者も増えるのではないかと考えています。
どんな学生に来てほしいかというと、今の段階でやりたいことが明確である必要はないと思っています。社会の構造に対してモヤモヤを感じている、自分自身が何に対して熱狂していくべきかにモヤモヤしているのでも構いません。そのモヤモヤを自分の言葉で表現できる学生に来てほしい。その状態で入ってきてもらえれば、BBT大学にはいろいろな仕組みやコミュニティがあるので、そのモヤモヤが晴れて行くような場や機会を提供できます。モヤモヤを抱えているけれど、それを晴らして前に進みたいという人に来てもらいたい。
それは高校から入学してくる人も、他大学から編入してくる人に対しても共通した希望です。
山本 今のお話しに、すごく一貫したものを感じます。入学前後から関係性の質を高めていくということ、人間関係のリスクを取っても自分の意見が言えるということで、高いパフォーマンスを発揮できるし、高い教育成果も得られます。リスクを取ることに躊躇して本音や自分の意見を言わないことで学びの質も下がってしまうという例は枚挙に暇がありません。リスクを取っても自分の意見が言える、モヤモヤを放っておかない、というのがBBT大学のアイデンティティかなと感じます。今後強化したいことは何ですか。
白崎 私自身は日本の高等教育を変えたいという強い思いを持っています。偏差値に捉われた教育を変えたい。自分の経験で言うと、私はずっと英語は暗記科目だと思っていて、あまり好きじゃなかったんです。それがバックパッカーになって南米に行った時に、スペイン語でコミュニケーションしたいと思って、そう言えばこれは英語ではこう表現したなと考えるようになったところから英語が好きになった経験があります。つまり教え込むとか覚え込むとかではなく、自分で学びたいと思えるような教育の仕組みやカリキュラムをBBT大学に作ることによって、そういう考えや仕組みが日本の高等教育に広がるきっかけを作りたいと思っています。だからこそ、この考えに賛同してくれる学生がこんなにいるんだと言えるだけの、多くの学生に来てほしいと考えています。
BBTにはMBAの大学院もあります。私は、大学院はキャリアアップのための場所で、BBT大学はキャリアチェンジの場所だと思います。今までの延長線上ではなくて、二次関数を描くようなキャリアチェンジを目指す場所です。本来の大学はそういった場所かもしれません。サラリーマンでやってきたけれど、自分にはひょっとしたら全く別の可能性があるのかもしれない。もっといろんなことに挑戦できるのかもしれない。それを先駆けて実践するのが、BBT大学だと思います。
山本 日本中の高校で、BBT大学がベストチョイスだという学生は少なくとも1学年に数百人はいると思います。ひょっとしたら数千人かもしれません。そうした人たちにしっかりと情報が伝わることを願って、対談を終えたいと思います。
イベントのご案内
コロナ禍をきっかけに場所や時間に縛られないオンライン授業への期待が高まっている一方で、いまだ多くの学生がオンラインでの学習効果が実感できなかったり、孤独感を感じるなど不安の声も聞こえてきます。
そんな中、BBT大学はオンライン大学としての歴史が10年以上あり、オンラインでの学びを経て社会で生き生きと活躍している数多くの学生が存在しています。今回そのような大学で学ぶ現役大学生と、社会で活躍している卒業生をスピーカーとして招き、台本なしの本音トークで100%オンラインの大学で学ぶ学生の等身大の姿をお届けします。
オンライン大学での学び方、学生生活が気になる方は是非イベントにお申込みください!
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BBT大学について
日本初の100%オンラインで経営学学士を取得できる大学として2010年に経営学部を新設。教授陣の6割が現役経営者、学生の約7割が社会人。大前研一が学長を務める本学では、“teach(教える)”ではなく学生が主体的に“learn(学ぶ)”するのを手助けすることに大学の役割があるという考えに基づき設計されたカリキュラムで、グローバル時代を生き抜く力の育成を目指している。2014年3月に1期生が卒業。2014年10月にはe-Learning大賞 厚生労働大臣賞を受賞。2015年12月に「ITソリューション学科」、「グローバル経営学科」、2017年1月に「履修証明プログラム」が、文部科学省「職業実践力育成プログラム(BP)」認定。
BBTについて
グローバル環境で活躍できる人材の育成を目的として1998年に世界的経営コンサルタント大前研一により設立された教育会社。設立当初から革新的な遠隔教育システムによる双方向性を確保した質の高い教育の提供を目指し、多様な配信メディアを通じてマネジメント教育プログラムを提供。大学、大学院、起業家養成プログラム、ビジネス英語や経営者のための勉強会等多用な教育プログラムを運営するほか、法人研修の提供やTV番組の制作などあらゆる年齢層に対し生涯に渡る「リカレント教育」を提供する。在籍会員数約1万人、輩出人数はのべ約5万人以上。また、1,300社以上の企業に対して研修を提供。2013年10月のアオバジャパン・インターナショナルスクールへの経営参加を契機に、生涯の学習をサポートするプラットフォーム構築をグループ戦略の柱の1つとして明確に位置づけている。https://www.bbt757.com