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大原 達朗

Tatsuaki Ohara

財務スペシャリスト

軸を作り、当事者になる
そして本気でやりきる!

商売に、財務は要らない

商売をする上で、財務の修得は果たして必要なことでしょうか。そもそも「商売」とは。1店舗の個人商店を経営すること、と考えてみると、自分の目の届く範囲の仕事とも言えます。この規模なら収支について、通帳の残高さえしっかりと見ていれば、何とか資金繰りはしていけるものです。個人商店の経営実態は、ほとんどの場合がそうなっているでしょう。ですから実は、「商売」に財務は必要とされていないのです。

しかし、これが「ビジネス」になると話は変わってきます。ビジネスとは、店舗が2つ3つと増えて事業が拡大していく状態のことです。自分の目の届く範囲外で物事が動いていきますから、全部を自分ひとりで見られなくなっていきます。数字で管理し、人に任せないと間に合わなくなります。

「財務の修得は必要な気がするけど、どこまでしっかりと勉強したらいいかわからない」という人は、自社のビジネスがまだ財務が必要となるサイズにまで大きくなっていない状態、と言えるでしょう。そのまま事業が大きくなっていくと「利益が出ているのに、何でこんなに手元に現金が残らないのだろう」という切実な経験をしていくことになります。そこで初めて、財務に代表される経営管理がいかに重要かを痛切に感じることでしょう。

「商売」と「ビジネス」は大きく違うのです。

財務は情報弱者にならないためのツールのひとつ

経営者ではなく、会社員の方にとって財務は不要なものでしょうか。実は個人商店の経営者よりも、会社員のほうが財務を分かっておく必要があります。

例えば、自分が所属する会社の状況をどこまで分かっていますか。仮に自分が乗っている船(会社)が沈みゆく状態であったとしても、それに気がつく人は多くないでしょう。ですが、沈み行く船はいずれ沈むのです。多くの場合、会社は30年と持ちません。新卒で入って定年までいられる確率は少ないわけです。幸運にも財務体質が健全な会社に入社できればいいですが、そのためには、会社の状態を数字で理解できるようになっておく必要があります。人から聞いて何となく判断していると後悔することになるかもしれませんが、自分で正しい状況がわかれば、自分で責任を持った判断ができます。

国家債務も同じです。「日本は危ない、危ない」と言われていますが、何がどの程度危ないのでしょう。日本の債務に関するデータは誰でも入手できるところにちゃんとあります。それらが加工され、メディアで報道されたものばかりを鵜呑みにするから、実態が自分で判断できなくなってしまうのです。数字を全く読めない人は、誰かに頼るしかなくなり、正しい情報の持ち主かどうかわからないどこかの誰かに、お金を持って行かれてしまいます。結局は、情報弱者が負けてしまうのです。

加工されていない数字を自分自身で把握できるようになるために、財務を修得することが大事なのです。財務は100~200時間もあれば十分その領域のエッセンスを修得できます。エッセンスを理解していれば、自分で全ての問題を解決できるまでには至らなくとも、専門家たちの話を理解できるくらいにはなり、専門家に適切に相談ができるようになります。エッセンスすら知らない状態で専門家に話を聞きに行ったところで何も理解できません。この差は大きいです。

しかし財務はあくまで情報弱者から脱出するためのツールに過ぎません。財務のエッセンスを理解しているからといって、ビジネスで何か大きなことを成し遂げられるわけではないです。財務とは別にもうひとつ「軸」と呼べるものが必要となります。

大切なことは軸をつくり、「当事者」になること

「軸」とは要するに、やりたいことを見つけてそれをやりきればよい、ということです。しかし、やりたいことをやることと、それを仕事にすることとの間には、大きな隔たりがあります。やりたいことで食べていけるようになるには、莫大な時間が必要となります。自分のことを思い返してみても、会計士の2次試験合格までに4度受験したので、10,000時間以上はかけています。その後、1日中働き続けるハードワークを5年間続けて独立しました。トータル30,000時間くらいが自分で商売をはじめるまでにかかった時間です。

この10,000~30,000時間に相当するもの=自分の軸を見つける上で大切なこと。それは、自分に与えられたものをまずやりきってこそ、見えてくるものだということです。目の前のことをやりきっていない人にはやりたいことは見つからないことが多い。真剣に仕事に向き合い、やりきるからこそ、もっと良い商品が作れる、もっと改善できることが見つかる、アイデアも浮かぶしチャンスが増える。

やりたいことが簡単には見つからないのは当たり前。それを見つけるためには目の前に転がっている、一見面倒くさい、やりたくないことでも圧倒的にトップを目指してやりきることが肝要です。やりたいことが分からない人やまだないという人は、手当たり次第何かやってみてください。例えば、会社の中で結果を出そうと思って本気で動いたら、問題はいくらでも見つけることができるものです。そうやって行動した先に、新しいチャンスを見つけられたり、自分が本当にやりたいことが見つかったりするのだと思います。

インタビュー動画

大原 達朗

一般財団法人日本M&Aアドバイザー協会代表理事/会長
アルテパートナーズ株式会社代表取締役
アルテ監査法人代表社員
PT. SAKURA MITRA PERDANA Partner
nmsホールディングス株式会社監査役
日本マニュファクチャリングサービス株式会社監査役
【所属団体】
日本公認会計士協会、一般財団法人日本M&Aアドバイザー協会(JMAA)、他
【資格】
公認会計士、JMAA認定M&Aアドバイザー
【著書】
「この1冊でわかる! M&A実務のプロセスとポイント」「決算書のチェックポイント」他

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